福岡高等裁判所 昭和34年(う)760号 判決 1959年10月28日
被告人 辻村利国 外三名
主文
原判決中被告人辻村利国、同谷口優、同池田清記、同小野真澄に関する部分を破棄する。
被告人辻村利国を原判示第二の各罪につき懲役六月に、原判示第一の(一)、(二)、原判示第四並びに原判示第六の(三)の各罪につき懲役一年六月に、
被告人谷口優を懲役一年六月に、
被告人池田清記、同小野真澄をいずれも懲役一年に処する。
被告人辻村利国に対しては原審の未決勾留日数中六十日を前記一年六月の本刑に、被告人谷口優、同池田清記同小野真澄に対しては同じく六十日を前記各本刑にそれぞれ算入する。
原審における訴訟費用中
証人筑後竜太郎、同吉尾能美、同持尾コノ、同持尾三鶴、同井本一利、同永井清、同村田基に支給した分は被告人辻村利国の単独負担
証人江口等、同平岡正則に支給した分は被告人辻村利国と同谷口優との折半負担
証人中島義雄、同光野利夫に支給した分は、被告人辻村利国、同谷口優並びに原審相被告人倉石信之、同中村政春の連帯負担
証人広瀬鶴吉に支給した分は被告人辻村利国、同小野真澄、同池田清記並びに原審相被告人森坪清隆の連帯負担
証人谷弘通、同藤田常吉に支給した分は被告人辻村利国、同谷口優、同池田清記、同小野真澄並びに原審相被告人植田善之助、同吉田民治、同山岡学、同和田良一、同和田政義、同谷口松夫の均分負担とし、
当審における訴訟費用中
証人藤村高次郎、同広瀬鶴吉、同中村惟義、同高鍋ヤスノ、同藤村定光、同藤本巧に支給した分は被告人辻村利国の、
証人谷口政利に支給した分は被告人谷口優の、
証人吉武鹿蔵、同清原肇、同藤門昭三に支給した分は被告人小野真澄の、
国選弁護人原口酉男に支給した分は、これを四分し、その一を被告人谷口優の、その余を被告人池田清記の各負担とする。
理由
(弁護人の控訴趣意について)
(七)第七点、原判決は法令の解釈適用を誤つている、との主張について、
刑法第四十五条後段にいわゆる其裁判確定前ニ犯シタル罪とは先に発覚した犯罪に対する判決の確定した日時までに犯した罪であつて、しかも右日時までに犯罪の終了したものを指すものと解するのを相当とする。けだし同条後段の規定は確定判決を経た罪と同時審判の潜在的に可能な状態にあつた罪とを併合罪とする律意に徴し、右判決確定の日時までに犯罪の終了しないものは潜在的にも同時審判は不可能な状態にあるものと解せられるからである。してみれば、原判決は、被告人辻村等の判示第四の所為を刑法第二百四十九条第一項の罪に問擬しているのであるから、右犯罪の終了時は判示金員の授受を了した昭和二十九年二月頃であつて、昭和二十八年十二月十二日判決の確定した判示銃砲刀剣類等所持取締令違反の罪とは刑法第四十五条後段の関係には立たないものというべきである。したがつて原判決がこれを判示第一並びに第六の各罪と併合罪の関係に立つものとして同条前段をもつて律したのはまことに相当であつて原判決には所論のような法令の解釈適用を誤つた違法は存しない。本論旨もまた採用し難い。
(その余の判決理由は省略する。)
(裁判官 池田惟一 厚地政信 中島武雄)